2016-01-31

タイ製自動車、日産マーチに見るアジア製”輸入車”の実情|タイ 日本

タイ製マーチ march-thailand
日本が世界に誇る自動車産業。各企業の努力により、年間1,000万台近い自動車が日本国内で製造されています。一方で各メーカーは海外へも積極的に進出し、日本の道路でもタイやインドネシアで製造された”外車”が頻繁に見られるようになってきました。




代表的な日本メーカーの輸入販売車種

エスクード new escudo
輸入車と聞いてすぐに思い浮かぶのはBMWやベンツと言った高級車ですが、日本のメーカーも一部の車種を輸入し、日本で点検の上販売を行っています。代表的な車種は以下の通り。

    日産自動車
  • マーチ(タイ製)
  • キックス(2代目、タイ製)

  • 三菱自動車
  • ミラージュ(タイ製)

  • スズキ
  • バレーノ(インド製)
  • エスクード(1.6リッターモデル)(ハンガリー製)

  • トヨタ
  • タウンエース(インドネシア製)
  • アベンシス(イギリス製)

上記以外でも日産自動車のデュアリスなど初期に海外から輸入をしていた例もあります。

世界戦略車の製造拡大

ミラージュ mitsubishi-mirage
日本のメーカーがわざわざ海外から輸入する理由は様々ですが、代表的な円高による為替の差もさる事ながら、最近では『世界戦略車』の販売拡大が大きく影響していると言えます。

以前であれば各地域ごとに設計し製造すれば良かった車が、今度は世界中津々浦々に売れる車が重視されるようになってきました。

少しずつ仕様や名称を変えるものの、ベースを統一して大量生産していく手法です。大量生産するとなると当然コストは安い方が良いので、タイやインド、東欧など人件費の安いエリアが尊重されるようになります。

現在のベトナムのように「部品は輸入がメイン」となってしまうと、いくら人件費にメリットがあっても、大量に安く作る事は出来ません。

しかし先に示したエリアは既に部品供給をしていく周辺産業(裾野産業と呼ぶ)も整い、品質を下げずに立派な車を製造する事が可能です。つまり日本のメーカーの車と言えど、既に日本が一つの”供給先でしかない”状況も出来つつあるのです。

かつては東京村山工場で製造されていた日産マーチ

タイ製マーチ march-thailand
先日タイ製のマーチをレンタルする機会があったので、簡単に触れたいと思います。数年前にモデルチェンジした現行のマーチから、タイで製造され日本へと輸入されるようになりました。

先先代のモデルは東京にあった村山工場で製造されていたのですが、わずか20年で海外で製造される車へと変わっています。


私が小さいころ村山工場を見学させてもらった事があり、2代目マーチの製造ラインを見て回りました。東京の小学生にとって日産の工場は社会科見学の代名詞であり、多くの人の記憶に残っているものと思います。

当時の工場は活気に満ち溢れ、窓から外を覗くと数え切れ無いほどのマーチが並んでいました。その後日産は経営が悪化し工場自体が無くなってしまうわけですが、周辺地域の雇用や産業に及ぼす影響は大きなものであったとと推測されます。

工場見学で案内をしてくれた若い女性や、工場の人達はどうなってしまったのか・・・と、たまに思い出しては気になってしまいます。




品質よりも、設計の安っぽさが気になる

タイ製マーチ march-thailand-engine
私は車の専門家では無いので細かい事は分かりませんが、製造の品質よりも設計の安っぽさに目がいくところです。

世界戦略車は比較的販売価格の安さが重視されるため、先代のマーチと比べて内装のチープさや、製造工程の省略が素人にも見えてしまいます。

タイ製マーチ march-thailand-engine-room
チープさの一例として見えたのがボンネットの裏です。普通ここは塗装されていてもおかしくありませんが、明らかに塗装の層が少ない事が見て取れます。車によっては防音材を貼り付けますが、それもありません。

タイ製マーチ march-thailand-tire
タイヤはMAXXISという台湾メーカーのもの。最近はアジアメーカーのタイヤも必要にして十分と聞きますが、どうしてもネガティブな印象を抱いてしまいます。

世界戦略車ですのでいちいち細かなレベルを上げるのは無理なのでしょうが、目の肥えた日本人に新興国と同じ車を売るのはどうにも厳しい気がします。

また新興国の人も車にはうるさいもので、少し背伸びをして良い車を選びたがります。日本人(いやフランス人?)のイメージする新興国戦略と、現実に乖離が無いものか気になるところです。

タイ人の能力は日に日に上がっている

thailand-parkingarea
タイ製と聞くと真っ先に製造現場のレベルを気にすると思いますが、既にタイ人にもベテランに達する技術者が登場しています。

各企業とも利益を増やすために現地化を進めますから、自然と現地人のレベルが上がっていくのです。また転職も容易にしますから、どんどんスキルを蓄積していきます。


最近の日本は停滞の雰囲気が蔓延しすっかり向上心を失ってしまいました。全員でないにしろ、下を俯いてばかりで何もしない人が本当に多く驚いてしまうほどです。

そうしている間にタイ人を始めアジアの人々は英語を勉強し、それを使って今度は技術を勉強し、次に商売を始めるわけです。

今の日本は本当に危機的で頑張らなければいけない時なのに、”簡単に儲かる方法”や”仕事をしないで放浪する”とか、そういう事ばかりが賞賛されます。しかし世界中の色々な人を見て思うのは『楽して立派になった人はいない』との事実です。

立派な人は工夫して、もがいて、先へと進んでいます。先進国になって安心しきっていると思いますが、既に発想力や実行力では、ASEAN諸国の人に勝てない人も増えているでしょう。

マーチはタイで買うより日本で買った方が安い??

thailand-highway
先日タイの方とお話をする機会がありました。

趣味とか興味とかたわいもない話をしていたのですが、車の話を出したところ場が湧き立ちました。ふと日産の話題になり『マーチって日本だといくらで買えるの?』と聞かれます。

日本ですと一番安いグレードで税込115万円。日本のディーラーは基本的に値引きをするとして、100万円以下で買える可能性もあります。

それを聞いたタイの方が『え、そりゃあおかしいぞ・・・・タイの方が日本より高いなぁ・・』と困惑顔。

確かに原産国より輸出先が安いとすれば、おかしな話です。新興国は産業保護で輸入車に関税や特別な税をかけていますが、タイの場合は、現地で生産された車を適切な値段で買えるよう配慮がなされています。

m
(NISSAN THAILAND WEBより)

早速調べてみると向こうの方がおっしゃる通り、タイの方が高い値付けになっていました。こちらはマニュアル車ですが、392,000タイバーツですので、現在のレートで日本円にして117万円。

m
日本で売られているCVTモデルは485,000タイバーツですので145万円。表示価格が税込・税抜きでも変わりそうですが、少なくとも日本のマーチの方がお得に見えてしまいます。

日本にいると何でも安くなるのが当たり前に感じるものですが、”安く作って高く売る”のが商売の基本です。

”外資系”らしくしたたかなNISSANが、上手な商売をしていると考えるべきでしょう。伸びている国々で日々情報を集めないと、商いの基本まで忘れてしまいそうですね。




関連記事