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2016-05-22

ファン視点で分析する三菱自動車の敗因と本当に組むべきだった相手|日本

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先日発生した三菱自動車による燃費計測の偽装事件。社会的な影響は大きく、自動車業界の再編にまで繋がってしまいました。




本当はタイ製ミラージュの話をしたかったが・・・

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当初タイ製のマーチに引き続いて、タイ製の三菱ミラージュの記事を書いておりました。しかし完成したところで事件が発生したため、内容を変えて配信することとした次第です。ちなみに私はここ数年で三菱車を2台購入する機会があり、はっきり言ってファンの部類に入るかもしれません。とは言えもう次は無いと確信したためファンは返上したいと思いますが、折角ですので元ファンの視点から三菱自動車の敗因と、日産自動車の資本参加の件を少しだけ掘ってみたいと思います。


1.リコール事件復活からの足踏み

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かれこれ15年以上前に発生したリコール隠し事件。事故等の発生で物理的に人々を苦しめ、元来のファンを大きく減らした事件でした。それから5年後の2005年東京モーターショー。反省と復活を掲げて4台の新型車が一気に展示されました。

”走り”や”デザイン”にこだわり、多くのファンが集まり再スタートを切ったわけです。そして現在。結局ほとんどの車は生産終了となり、後に残ったのはモデルチェンジされないまま10年近く販売を続けるデリカD:5のみ。

結局勢いがあったのは最初だけで、後に続く明るい話はどんどん消えてしまいました。

2.ダウンサイジングとSUVの波にのれなかった三菱

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三菱と言えばパジェロを代表として4WDのイメージが強い会社であると言えます。私が社長であればこのブランドイメージをフル活用すると思うのですが、三菱はそれを忘れていたのか結局現在のコンパクトSUV人気の波にすらのる事が出来ませんでした。

実は10年ほど前から『小さくて乗りやすい4駆(SUV)が欲しい』との声がユーザーから多数出ていたそうですが、メーカーからディーラーへは『とりあえず今売れる大型SUVを売り込め!』という無理な指示が出ていたと聞いた事があります。

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ぼーっとしている間に世界的なダウンサイジングとSUVブーム到来。そう言えば三菱のヒット作としてパジェロミニという軽自動車の4駆があったのですが、何故だかモデルチェンジせずにこちらも生産終了

三菱が何もしない間にスズキのハスラーは飛ぶように売れ、普段冒険しないトヨタですらC小型SUV CH-Rを世界中で発売しつつあります。得意であったはずの分野でも勝てない三菱・・・。

3.買う車が無い、売る車が無い

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時間が経つにつれ増えていく生産終了車種。社長曰く「絞り込み」ですが、ユーザーからすれば『買う車が無くなり』、ディーラーからすれば『売る車が無くなる』一大事です。絞り込みをしたのであれば当然その代わりが出てくるはずですが、発表されるのは軽とPHEV(プラグインハイブリッド)車のみ。

開発費が少ないのか、モデルチェンジした車にも関わらず旧型の部品がそのまま使われていたり、ユーザーから見ても怪しい状況が目立つようになります。デザイナーが辞めてしまったのか新型車の見た目もパッとせず、だんだん古臭くなる始末。

一生懸命ネット広告を活用するものの、社会からの注目度自体が下がっていきます。下は研究開発費の比較。三菱はここ数年400億円程度ですが、トヨタはともかくマツダでも1000億円なので2倍の差があります。



4.三菱自動車には高価格車しか残っていない

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そして以前から噂のあった日産の資本参加に至るわけですが、時系列で整理していくと値段の安い車と高い車に資源を集中している事が分かります。燃費の件で問題になったekシリーズは100万円台、タイで作っている大衆車のミラージュも100万円台、アウトランダーPHEVは400万円。そして車種が減っているのは間の価格帯です。

IR情報を見ると売り上げは微増ながら、営業利益と経常利益は伸び続けています。つまり車種を減らしたり、海外市場を重視する戦略が経営上は成功している事を認めざる終えません。

しかし安い車はともかくとして、問題は高い車。PHEVは確かに立派に走るセミ電気自動車ですが、400万円と言えばベンツやBMWの高級SUVが買えてしまいます。

多くの人にとって車は資産の一つですから、わざわざ価値が落ちやすい三菱車を選ぶのはリスクでもあります。高付加価値車を高い値段で売るのは自然な行いですが、現在の三菱ブランドでは大きく売上に貢献するのは難しいのでは無いかと感じるわけです。

私自身目の前に400万円があるとすれば、確実にBMWのX1やレクサスのNXを買うと思います。維持費はかかるとしても、乗って楽しい、飾って綺麗、そして三菱よりは値段が落ちにくいという多数のメリットがあります。



日産の資本参加の影響は?

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20代から工場長を務めていたという真のビジネスパーソンであるゴーン氏が絡めば、三菱自動車内に大きな変化が起こる事はほぼ確実でしょう。元から利益は回復していた会社ですから、次はよりポジティブに売上・販売台数の向上を目指す可能性があります。

良い影響を素直に受け入れれば”売れる車”が新たに登場してくるでしょうが、日産らしくバッサリとコストダウンされた車が増える事も覚悟しなければなりません。

外野からはいくらでも言えますが、個人的にはSUBARUやマツダの方が組む相手としては良かったのではないか?と感じる部分もあります。企業提携の失敗談を読んでいると『企業方針がそもそも合わなかった』といった摩擦に起因するものを多々見かけます。

SUBARUもマツダもハイテクを取り入れつつ、”運転の楽しさ”を消さずに維持しているが故にファンから愛されています。三菱もどちらかと言えば運転する側を重視する企業でしたから、日産よりも後者と組む方が元気良く活動出来たかもしれません。

今後数年で自動運転や電気自動車or次世代自動車がますます伸びていく見込みです。部品点数の少ない電気自動車はスマートフォンのように、次世代企業が一気にシェアを覆す可能性もあります。新たな敵を迎える時代になり、自動車業界の再編はもう少し進むのでは無いかと感じます。




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