ロールス・ロイスは二つの会社がある
世界中でロールス・ロイスブランドと言えば、高級車の代名詞となっています。日本においても、車に詳しく無い人ですらロールス・ロイス=高級なイメージを連想するのではないでしょうか。ロールスロイスと名の付く会社は2つあり、自動車を作る会社”ロールス・ロイス・モーターカーズ”と”ロールス・ロイス”は別々の会社になっています。
後者は今回のメインテーマである旅客機用のエンジンを製造したり、原子力発電所の設備、船舶の備品など工業向けの製品を幅広く取り扱っています。
ロールス・ロイスTrent1000エンジンの内側
以前ボーイング社のエベレット工場を見学したのですが、その際に展示してあったトレント1000エンジンの実物です。普段エンジンを外側から見ていると非常にシンプルな印象ですが、蓋を開くと配管や機器が周囲に張り巡らされており”精密機械”である事が良く分かります。
海外メーカー製ではあるものの、表面を見ていくとあちらこちらに日本製の部品も搭載されています。
787の機体自体も世界中の協力で製造が成り立っていますが、その他の部品・装備の数々も各国メーカーの協力があってこそ完成するのです。
ANAはロールス・ロイスがお好き?
大型旅客機のエンジンメーカーとしては”ロールス・ロイス、GE、P&W”の3社が有名です。10年以上前だったと思いますが、JALの機内でベテランの男性CAさんとお話をした事がありました。幾つかの話題の中で特に面白かったのがエンジンのメーカーに関する事です。「ANAさんはロールス・ロイスが多いんですよね〜、JALはGEが多いです」と言われて、エアラインによってエンジンを選ぶのか!と驚いた事がありました。
JALも787は大量に採用していますが、エンジンはGE(ゼネラレル・エレクトリック)社製のGEnxを選んでいるのでANAと同じ問題は発生しません。燃費や騒音、整備の兼ね合い等も含めて航空会社毎の条件に合わせた選択をしていくわけです。
※ANAの機材導入史を見ると、実際にはGEやP&Wのエンジンも採用しており、必ずしもロールス・ロイスに偏っているわけではありません。
航空機とその部品はとても慎重に作られている
ANAにとってエンジンのタービン破損は”リチウムイオン電池事故”と合わせて2回目の災難でしたが、該当するユニットや部品を作るメーカーが手を抜いて造ったとは到底思えません。航空産業も自動車産業と同じで、大きいメーカー→下請け会社の構図があるのですが、自動車以上に守るべきがルールが数多く存在します。
メーカーとしての独自ルールや、AS/EN/JISQ9100と呼ばれるマネジメントシステム規格、そしてNadcapと呼ばれる特殊工程や製品に関する規格など、"がんじがらめ”と言っても過言ではありません。
新規参入も難しく、参入するために社内の体制を見直したり、高額な機器を導入して製品としての精度を上げたり、努力を重ねて初めて納入が開始出来るようなシビアな世界です。
だからと言って事故や故障が許されるものではありませんが、毎日世界中で15万ものフライトが飛び交う中でこれだけ航空事故が少なく済んでいるのは、厳重な製造プロセスと、日々の手厚い整備によるものである点は事実として知っていただきたいと思います。